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ビフィズス菌について

ビフィズス菌とは(要約)

ビフィズス菌の特徴

ビフィズス菌とは

ビフィズス菌はY字やV字の形状をした、人間や動物の腸に生息する善玉菌です。酸素のある環境では活動することができない偏性嫌気性菌で、主に口から遠く酸素の薄い大腸に生息しています。
一般的には乳酸菌の一種として扱われますが、違う善玉菌として区別されることもあります。なお、誤解されることがありますが、ビフィズス菌は特定の菌を指すのではなく、ビフィドバクテリウム属に属する菌の総称で、一言でビフィズス菌と言ってもその性質や効果はさまざまです。
このビフィドバクテリウム属には数多くの菌が属していて、これまでに約50菌種に分類されています。このうち人間の腸からは約10種類のビフィズス菌が発見されています。
また、人間の腸内に生息するビフィズス菌は、動物に生息するビフィズス菌と種類が異なっていて、人間の腸で見つかったビフィズス菌は動物の腸からはほとんど見つかっていません。逆に動物の腸に生息するビフィズス菌は人間の腸では活動できないと考えられています。

成人の腸内に生息する善玉菌の95%以上はビフィズス菌

私たちの腸内には500種類以上、100兆~1000兆個もの腸内細菌が生息し、それぞれ種類ごとにまとまり腸内フローラを形成しています。
この腸内細菌は、体に有用な善玉菌と体に害を及ぼす悪玉菌、そのどちらにも属さない日和見菌に分けられていますが、このうち善玉菌の95%以上がビフィズス菌です。
善玉菌と聞くと真っ先に乳酸菌をイメージする人が多く、人の腸内にもたくさんの乳酸菌が生息していると勘違いされがちです。
しかし、成人の腸内に生息する乳酸菌は善玉菌全体の数%、ビフィズス菌の1/100~1/1000に過ぎないのです。乳酸菌は成人の腸内で少数のためあまり大きな影響力がありません。
人間の腸内で常に優勢なのはビフィズス菌です。健康な成人では腸内細菌の約2割が善玉菌ですから、20兆~100兆個前後のビフィズス菌が生息していると考えられています。

ビフィズス菌の歴史

1899年にティシエが発見する

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ビフィズス菌は1899年に、フランス・パスツール研究所のティシエ博士によって母乳で育てられた乳児の糞便から発見されました。
この菌は現在ではビフィドバクテリウム・ビフィダムに分類されていますが、ビフィズス菌が発見された当時はビフィドバクテリウム属がなく、ラクトバチルス属に分類されました。
ティシエが発見した菌は当初、バチルス・ビフィダスと命名されています。ところが研究が進むとラクトバチルス属とは明らかに違う性質を持つことから、新たにビフィドバクテリウム属が設けられ再分類されました。

成人の腸内でもビフィズス菌が優勢であることが明らかになる

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1950年代まで、人間の腸内でビフィズス菌が優勢なのは乳児だけであり、成人の腸内では大腸菌が優勢であり、ほかに乳酸桿菌(棒状の形状をした乳酸菌)であるアシドフィルス菌が生息しているというのが定説でした。
ところが、日本で腸内細菌研究の第一人者である東京大学の光岡知足名誉教授が、自分の便に含まれる細菌を培養して調べたところ、大部分が空気がある環境を嫌う嫌気性菌であることが分かりました。
大腸菌は空気のある環境を好む好気性菌ですから、当時の定説があっさり崩れたのです。さらに調べると培養した嫌気性菌の中で、最も優勢だったのは乳児の腸内にしか生息していないとされていたビフィズス菌だったのです。
こうして成人の腸内でもビフィズス菌が優勢であることが明らかになりました。とはいえ、当時は光岡氏のキャリアが浅かったため学会で発表してもなかなか信じてもらえず、この事実が広く認められるまでに20年ほどを要しました。

酸や熱に強いビフィズス菌の発見で食品への応用が進む

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もともと人と動物の腸内に生息しているビフィズス菌は、20世紀の半ばまで食品への応用が進みませんでした。
その理由は酸や熱、酸素に弱いというビフィズス菌が持つ性質にあります。ヨーグルトなどの製造に使いたくても、培養する過程で自らが作った酢酸によって死滅してしまうため、食品への応用が技術的に困難だったのです。
1971年になると熱や酸素、酸に強いロンガム種のビフィズス菌が発見され、BB536株と命名されます。この菌株の発見によって食品応用への道が開かれます。
その後もBE80株、Bb-12株など酸や熱に強い菌株が次々に発見されています。現在ではビフィダム種、ブレーベ種、ロンガム種、インファンティス種、ラクティス種などがヨーグルトなどの発酵食品作りに利用されています。

ビフィズス菌の働き

殺菌力の強い酢酸を生成する

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ビフィズス菌も乳酸菌も、ブドウ糖や乳糖などの糖をエサにして活動する微生物である点が共通しています。違いは代謝によって生成する酸の種類です。
乳酸菌は代謝によって生成する物質の5割以上が乳酸です。一方のビフィズス菌は5割以下の乳酸しか生成せず、代わりに多くの酢酸を生成します。
酢酸とは食酢の主成分のことです。ちなみに食酢に含まれる酢酸は小腸で吸収されてしまうため大腸には届きません。
ビフィズス菌が生成する酢酸には強い殺菌力があり、腸の粘膜を保護する効果があります。また酢酸が大量に生成されることで、腸内のpHを下げて酸性に近づけてくれます。この現象はヨーグルトや漬物などの発酵食品が作られる過程で起きる乳酸発酵と全く同じです。
悪玉菌はアルカリ性の環境を好み、善玉菌は弱酸性の環境を好みます。酢酸が生成されることで腸内の善玉菌は活性化して、悪玉菌は抑制されます。
私たちの腸が健康であれば、ビフィズス菌が活発に働いて腸内の発酵が進むことで、悪玉菌の増殖を防いでくれます。

ぜん動運動を促す

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大腸に生息するビフィズス菌はスムーズなお通じを保つために重要です。ビフィズス菌には、腸の平滑筋を動かして食べ物を排出に導くぜん動運動を促す働きがあります。
私たちが毎日のように自然に便意を感じて排便ができるのは、このぜん動運動が発生するおかげです。つまりビフィズス菌がしっかり働いていれば、ぜん動運動によって適度なお通じが保たれ便通が良くなります。

ビタミンを合成する

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意外と知られていませんが、ビフィズス菌にはビタミンB群、ビタミンK、葉酸などさまざまな種類のビタミンを合成する働きがあります。
体の機能を維持するためにはさまざまな種類のビタミンが必要です。しかし、毎日の食事からビタミンを、体に必要な種類をまんべんなく、十分な量を摂れるとは限らないので、不足分は腸内で合成しています。
ビフィズス菌が作り出すビタミンの中でも特に重要な働きをするのがビタミンB群です。エネルギーの代謝に不可欠な栄養素であり、不足するとビタミン欠乏症に陥ります。
また、ビタミンKは血液の凝固と骨の形成に、葉酸は細胞を作る核酸の合成と赤血球の形成に欠かせない栄養素です。
ビフィズス菌が腸内に生息しているおかげで、私たちの体に必要な栄養素が作られ、ビタミン摂取量が不足していても体の機能を維持することができるのです。

感染防御と免疫力の向上

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私たちの体内には、ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫システムが備わっています。この免疫システムを維持しているのが免疫細胞で、約7割が腸に集中しています。
悪玉菌が増殖すると免疫力を低下させて、風邪やインフルエンザ、病原性大腸菌O-157などに罹りやすくなります。ビフィズス菌が活発に働いている腸内では悪玉菌が抑制されるため、感染症のリスクを下げることができます。
さらにビフィズス菌には免疫調整作用があります。ビフィズス菌によって腸管が刺激されることで、免疫細胞が活性化されてウイルスや細菌から身を守ります。ほかにも免疫バランスを整えることで、アレルギー症状を緩和する効果が期待されています。

ビフィズス菌を活性化すれば腸の健康を維持できる

悪玉菌を抑制するビフィズス菌

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ビフィズス菌が生息する大腸は、便を形成する場所であり、小腸で消化しきれなかった栄養素をエサに、多くの腸内細菌が生息しています。
その中にはたんぱく質や脂質をエサにして活動する大腸菌(有毒株)やウェルシュ菌といった悪玉菌も含まれます。
大腸で悪玉菌が増殖すると、小腸から送られた食べかすからアンモニアや硫化水素、インドールやスカトールといった腐敗物質を作り出し、腸内を腐敗させてしまいます。
腸内腐敗が進行するとぜん動運動が弱くなり、便秘やお腹の張りを引き起こしたり、腐敗物質が腸を刺激して下痢を引き起こしたりします。
悪玉菌を抑制し腸内環境を良好に保つためには、ビフィズス菌を活性化する必要があります。

善玉菌2割を維持しよう

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腸内に生息している善玉菌のほとんどはビフィズス菌ですから、善玉菌が優勢であるということはビフィズス菌が活発に働いていることを意味しています。
健康な成人の腸内では善玉菌が全体の2割を占めています。1割は悪玉菌で残りの7割は日和見菌です。
善玉菌と悪玉菌の数の差が小さいように感じられますが、腸内で多数派を占めている日和見菌は、善玉菌と悪玉菌のどちらか優勢なほうに味方をする性質があります。
ですから善玉菌の数が悪玉菌の数を上回っていれば日和見菌が味方をするため、悪玉菌が暴れることはなく増殖を抑えることができます。

ビフィズス菌を摂ろう

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腸内のビフィズス菌を活性化するためには乳酸菌を摂っても意味がありません。比較的酸素が少ない環境を好む通性嫌気性菌の乳酸菌は、主に小腸で活動するからです。
そこで摂りたいのがビフィズス菌を含むヨーグルトやサプリメントです。ビフィズス菌は動物由来の菌ですから、乳製品などの動物性の食品に含まれています。
これらの食品に生息するビフィズス菌を生きたまま大腸まで届けることができれば、殺菌力の強い酢酸を生成することで優れた整腸作用が期待できます。

食物繊維とオリゴ糖が腸内のビフィズス菌を増やす

食べ物から摂ったビフィズス菌が腸内で増殖するわけではない

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ヨーグルトやサプリメントからビフィズス菌を摂り、胃酸や胆汁酸に耐えて生きたまま大腸に到達したとしても、その菌が腸内で増殖するわけではありません。
なぜなら100兆個以上もの細菌が生息する環境に、せいぜい数十億個程度の菌が新たに加わったところで、腸内フローラのバランスを変えることはできないからです。
それどころから腸内に長く留まることがでぎすに、数時間から数日程度で便として排出されていきます。

腸内のビフィズス菌を増やすにはエサが必要

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腸内のビフィズス菌の数を増やすには、新しい菌を食品などから補給するのではなく、もともと生息しているビフィズス菌を活性化して増殖を促す必要があります。
そのためにはエサが必要です。大腸にどれほどの数のビフィズス菌が生息していても、十分な量のエサがないと活動することができません。
ビフィズス菌は乳酸菌と同じように糖をエサにしています。ですが砂糖やブドウ糖などの糖は小腸ですぐに吸収されてしまうため、大腸に届かずビフィズス菌のエサにはなりません。
ビフィズス菌のエサにするためには小腸で分解吸収されにくい栄養素を摂る必要があります。その栄養素は主に食物繊維とオリゴ糖です。
どちらも小腸でほとんど分解されない難消化性の栄養素であり、ビフィズス菌など善玉菌のエサとなります。

ビフィズス菌が好むオリゴ糖

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多くの糖類の中でも特にビフィズス菌が好むのがオリゴ糖です。光岡知足氏がオリゴ糖の特性を調べたところ、ビフィズス菌を増やす性質を持つことが分かりました。
ヒトの腸内フローラを構成する代表的な菌種を選び、試験管でオリゴ糖との相性を調べる実験を行ったところ、ビフィズス菌が最も利用度が高く他の菌を圧倒していたそうです。
さらに病院で治療を受けている50~90歳の23名を対象にした試験では、フラクトオリゴ糖を2週間摂ってもらい、腸内フローラを調べました。
その結果、フラクトオリゴ糖を摂取中は、摂取前と比べてビフィズス菌の数が約10倍に、検出率が87%から100%に増加することが確認されました。

野菜や果物をたくさん摂ることでビフィズス菌を増やすことができる

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食物繊維は水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維があり、どちらもビフィズス菌のエサになります。
水溶性食物繊維は果物、海藻類、切干し大根、ゴボウ、干し椎茸、いんげん豆などに多く含まれています。不溶性食物繊維はサツマイモ、ゴボウ、レタス、キャベツ、大豆などに多く含まれています。
不溶性食物繊維は便の嵩を増すことでぜん動運動を促す働きがありますから、ビフィズス菌との相乗効果が期待できます。
オリゴ糖はりんご、バナナ、ぶどう、ゴボウ、玉ねぎ、キャベツなどに多く含まれています。オリゴ糖が多く含まれる食品には食物繊維も多く含まれていますから、多くの食品を摂らなくても効率よくビフィズス菌のエサを大腸に送ることができます。

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