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世界の乳酸菌食品

世界の乳酸菌食品

日本の乳酸菌食品

ヨーグルトで知られる乳酸菌は、腸内環境を整えてくれる健康成分として日本でもすっかり定着しました。一方で食品を発酵させる微生物でもあり、日本では漬物、味噌、醤油、甘酒などさまざまな発酵食品作りに活用されています。

乳酸菌食品の歴史は紀元前まで遡る

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乳酸菌の歴史は紀元前、人類が牧畜をはじめた頃まで遡り、動物の乳を入れていた容器に偶然にも自然にある乳酸菌が入り込んだことで、発酵してヨーグルトが出来上がったことから始まります。
乳酸菌によって発酵が進むことで食品のpHが下がり、雑菌の繁殖を防いで保存を高めてくれます。

世界には様々な乳酸菌食品がある

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乳酸菌を使った食品と言えばヨーグルトなどの乳製品をまずイメージします。
ヨーグルト一つをとっても国によって原料、製法も味も異なり、たくさんの種類があります。
さらに世界各地にはヨーグルト以外にも、韓国のキムチ、中国のザーサイ、モンゴルの馬乳酒、インドのギー、ドイツのザワークラウトなど、乳製品から漬物、お酒まで、その国ならではの特色ある発酵食品が乳酸菌によって作られ、食文化として根付いてきました。キムチのように世界的に有名な食品からあまり知られていない食品まで、個性豊かな世界の乳酸菌食品を紹介します。

アジア

韓国

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・キムチ
韓国を代表する発酵食品であるキムチは、白菜やキャベツなどの野菜と、塩、唐辛子、魚介塩辛、ニンニクなどを加えて乳酸発酵させて作る漬物です。
唐辛子の強い刺激と野菜の甘味、塩辛さ、乳酸発酵によって生まれる酸味と旨み、これらが複雑に絡み合って生み出される独特の味と風味が特徴で、その数は350種類以上あると言われています。
地域によって種類も味も異なり、北に行くと薄味になり辛さもマイルドに、汁気が多くなります。一方、南部のキムチは唐辛子が多く使われるため、辛くて濃厚で汁気が少ないのが特徴です。
キムチからはロイコノストック属、ラクトバチルス属、ワイセラ属を中心に100種類以上の乳酸菌が見つかっています。

・マッコリ
朝鮮半島で飲まれている日本の「どぶろく」に近い米から作られる醸造酒です。アルコール度数は6~8%程度と低めで、甘くさわやかな酸味があり飲みやすいお酒です。
各家庭で消費する分だけを作っていたため、麦麹を使い、米や麦を原料にして、乳酸発酵させることで雑菌の繁殖を防ぐ以外に共通点はなく、決められた醸造法もありませんでした。
やがて日本の統治下に置かれると、日本の醸造技術が朝鮮半島に持ち込まれたことで品質は安定しましたが、伝統的な製法は失われていきます。

現代のマッコリは日本などに輸出する目的で、加熱殺菌処理され添加物を加えたものが主流になっています。一方で加熱しない生のマッコリは長期保存はできませんが、昔ながらの味わいに近く、生きた酵母や乳酸菌を摂ることができます。

マッコリは暑い夏場に冷やして飲むのに適しています。本場の韓国では大きな丼のような器に注ぎ、パガジという柄杓で各々の器に取り分けて飲みます。
料理との相性も良く、韓国ではチヂミやパジョンといったネギの焼き物、キムチ、ガンギエイの刺身を発酵させたホンオフェなどと一緒に食べられています。

中国

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・ザーサイ
日本でも中華料理でお馴染みのザーサイは中国を代表する漬物です。発祥は現在の重慶市フ陵区で、1930年頃から中国全土に流通するようになりました。
アブラナ科の越年草であるザーサイの茎を天日干しし、一度塩で漬けてから搾って塩気を抜き、塩、唐辛子、花椒、酒などとともに漬け込みます。
ザーサイは世界一乳酸菌が多い植物と言われていて、食物繊維も豊富に含んでいることから腸内の善玉菌を増やし、整腸効果が期待できます。
食べ方は塩抜きしてから刻んでチャーハンや炒め物に加えるほか、中国粥の薬味、中華まんや餃子の具にも使われています。

・メンマ
麻竹(マチク)などのタケノコを乳酸発酵させて作る中国伝統の食品で、日本ではラーメンの具として親しまれています。
原材料の麻竹は蒸してやわらかくしてから竹籠に入れて2~4週間程度かけて発酵させます。この間に乳酸菌が働いて、さわやかな酸味がつき雑菌の繁殖を防いでくれます。
発酵が進んだら次は天日干しにして自然乾燥させてから加工します。塩抜きしたもの、味付けしたものも売られています。タンパク質、食物繊維が豊富に含まれていて、整腸作用が期待できます。

モンゴル

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・馬乳酒
馬乳を原料に作られる乳性の醸造酒で、馬の飼育が盛んなモンゴルや中国の内モンゴル地域で夏に作られ飲まれてきました。
馬乳に含まれる乳糖に酵母が働くことでエタノールが作られ、乳酸菌によって乳糖が分解されて乳酸発酵が進むと強い酸味と微発泡が生まれます。
起源は定かではありませんが、中央アジアで馬を家畜として飼育するようになった頃から作られていたと考えられています。

モンゴルでは人は赤い食べ物と白い食べ物で生きていると考えられていて、赤は肉、白は乳製品を指し、野菜が貴重な遊牧民の生活でビタミンやミネラルを補うために大量に飲まれてきました。
酒ではありますがアルコール度数は1~3%程度と低いことから、モンゴルでは乳酸飲料として扱われ、水分や栄養補給のために赤ちゃんからお年寄りまで幅広く飲まれています。

インドネシア

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・ダディ
スマトラ島で作られる伝統的な発酵乳です。水牛の乳を竹筒の容器に入れてバナナの葉で蓋をします。常温で2日ほど置くと、数種類の乳酸菌が働いて発酵が進みダディになります。
チーズのような香りが特徴的です。インドネシアではアンピアン(もち米を揚げたあられ)とパールシュガーに混ぜ合わせて朝食として食べられています。

インド

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・ギー
バターオイルの一種であるギーはインドを中心に南アジアで古くから作られてきました。牛や水牛、ヤギの乳を加熱殺菌してから乳酸発酵させて、凝固したら攪拌してバター状にします。
これをゆっくりと加熱すると、溶けて脂肪分が黄色くなり、沈殿した固形物が褐色になったらろ過し、容器に移して冷まします。
加熱ろ過することで、水分、糖分、タンパク質などが取り除かれるため、バターよりも日持ちし、常温で長期保存することができます。厳しい暑さに見舞われる地方では、調理油や香り付けのスパイスとして重宝されてきました。
加熱することで独特の香ばしい香りが生まれるのが特徴で、炒め物やお菓子作りのほか、ご飯に混ぜたり、チャパティやナンに塗ったりとさまざまな用途に使われています。

・ダヒ
水牛や牛の乳から作られるインドを代表するヨーグルトです。伝統的な製法は牛乳を加熱殺菌してから、専用の壷に入れて種菌として残ったダヒを加えて半日室温で乳酸発酵させます。
酸味は控えめでえぐ味がなく、栄養価が高いのに低カロリーです。日本のヨーグルトと違ってペクチン(安定剤)で固めずに乳酸菌だけで凝固します。
そのまま食べるほか、サラダ、肉料理に加えて使います。ほかにもダヒにクリームとミルク、水、好みで砂糖を加えて、よくかき混ぜて泡立て水分と脂肪分を分離させると「ラッシー」というバターミルクのような飲み物が出来ます。

ロシア

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・ケフィア
「いいえケフィアです」のCMによって日本でもその名を知られるようになったケフィア、ヨーグルトと誤解されることもありますが似て非なる発酵食品です。
ケフィアとは乳酸菌と酵母によって作られる発酵乳です。日本では「ヨーグルトきのこ」と呼ばれていますが、酵母が使われている点がヨーグルトとの大きな違いです。
カリフラワーのような形の「ケフィアグレイン」という種菌を、牛乳に加えて自然発酵させると、ドロドロした乳飲料が出来上がります。乳酸発酵によって、炭酸と僅かなアルコールが生まれ、味はピリっとした刺激とさわやかな酸味があります。

いつ頃から作られていたかは定かではありませんが、少なくとも2000年以上の歴史があり、カスピ海と黒海に挟まれたコーカサス地方で生まれました。
この地方では古くからヤギや牛、羊の乳を皮袋に入れて自然発酵させて飲んでいましたが、中身を棒でかき混ぜたり、揺らして攪拌させているうちに、偶然にもケフィアが作られたと言われています。
ケフィアには乳酸菌や酵母など数十種類の微生物が生息しています。これらが体内で働くことで、整腸作用やダイエット効果が期待できます。またカルシウム、ビタミンB1・B6・B12、葉酸など豊富な栄養素が含まれていて美容にも役立ちます。

・スメタナ
ロシアや東欧で作られているサワークリームです。生クリームを乳酸菌発酵させて作り、味はしっかりとした酸味がありますが、さっぱりとしていてマイルドです。
ロシアではボルシチ、シチー、ペリメニなど、あらゆる料理に添えられています。他にも肉や魚などにかけてオーブンで焼いたり炒めたりして食べられています。
比較的低温でも発酵が進むため、一般的なヨーグルトと違って加熱する必要がなく、低温が保てるため雑菌が繁殖しにくいのが特徴です。

ヨーロッパ

ブルガリア

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・キセロ・ムリャコ
牛乳、羊乳、水牛乳から作るブルガリアを代表するヨーグルトです。37~45℃で培養したブルガリア菌とサーモフィラス菌で発酵させて作ります。
その歴史は紀元前4000年頃まで遡り、トラキア人が作り始め、やがてスラブ人やブルガリア人に引き継がれました。
伝統的な製法では煮立ててから冷ました乳を素焼きの壷に入れて種菌を加えます。これを布で包んで保温し時間を置くと、牛乳の水分が壷に吸収され、乳が濃縮されるとともに気化熱によって壷の内部が37℃程度に保たれます。
ブルガリアではヨーグルトをさまざまな料理に活用しています。タラトール(キュウリなどを入れた冷静スープ)、スネジャンカ(クルミなどを入れて作るサラダ)などがあります。

・ブラノ・ムリャコ
ブルガリアの山岳地帯で冬に貴重なたんぱく源として利用されてきた発酵乳です。毎年9月から10月にかけて作られ、加熱してから冷却した羊乳に種菌を加えて、毎日のように煮沸して冷却し羊乳を継ぎ足しながら15~20℃で25~30日間発酵させます。
出来た発酵乳は、ひまわり油、バターオイル、溶かしたカシカバルチーズなどで覆って長期保存します。

ドイツ

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・ザワークラウト
ドイツで伝統的に作られてきたキャベツの酢漬です。乳酸発酵させることで独特の酸味が生まれます。ドイツのほかポーランドやフランスのアルザス地方、ロシアや北米まで広い地域で食べられています。
各家庭によってさまざまな作り方がありますが、一般的にはキャベツを繊切りにして、塩と香辛料とともに漬け込みます。ビタミンCが豊富に含まれていることから、古くは船乗りの航海中の壊血病予防として船内で常食されていました。

フィンランド

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・ヴィーリ
フィンランドでは発酵乳を「ピーマ」と呼びますが、西南フィンランドでは、粘り気のある「ピトカピーマ」という発酵乳が昔から作られてきました。
ヴィーリは牛乳に乳酸菌を加えて乳酸発酵させ、表面に浮き出てきたビロードのようなクリーム層に乳カビが生息してできた発酵乳です。
味はヨーグルトに近く少しの酸味とピリっとした風味、糸を引くようなトロりとした粘り気が特徴です。フィンランドでは朝食やおやつの定番として親しまれ、砂糖、蜂蜜、レーズン、ジャム、シナモンなどを加えて食べられています。
ヴィーリに使われている乳酸菌はカスピ海ヨーグルトでもお馴染みのラクトコッカス属のクレモリス菌で、EPSと呼ばれる粘り成分を作り出すことで知れています。

ノルウェー

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・テッテメルク
ノルウェーではテッテメルクという粘り気と酸味の強い発酵乳があります。昔はテッテグラスという植物を大樽の底に敷いて、上から牛乳を入れて、穴蔵の中で発酵させて作られていました。
冷蔵下で長期保存できるのが特徴で、寒冷な気候のスカンジナビア半島で古くから飲まれてきました。乳酸菌にはラクトコッカス属ラクティス種やリューコノストック属メセンテロイデス種が使われ、常温で発酵させます。
砂糖、シナモン、フラットブレッドと呼ばれるパンを砕いたものを加えたテッテメルクはノルウェーでポビュラーな朝食です。

デンマーク

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・イメール
イメールはデンマークを代表する発酵乳です。作り方は二種類あり、乳酸発酵させた牛乳からホエイを取り除いて作る方法と、逆浸透法で濃縮させた牛乳を発酵させて作る方法があります。
タンパク質を6%以上含むため栄養価が高いのが特徴で、味は濃厚でありながらとてもまろやかで口当たりが良く飲みやすいため、牛乳代わりに常飲されています。コーンフレークやオートミールにイメールを加えた朝食はデンマークの定番です。

中近東

トルコ

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・トルバ
トルコで食べられているシンプルな水切りヨーグルトです。トルバと呼ぶ布袋にヨーグルトを入れてホエイを除き、乳固形分が30%程度になると出来上がります。
ここからさらに水分を抜いて塩を加えてよく練り、丸めて天日干しした硬いヨーグルトを「クルト」と呼びます。

・アイラン
ヨーグルトに水と塩を混ぜた飲料で古くからトルコで作られてきました。ヨーグルトに塩を加えて長期保存しようとしたのが起源とされています。
よく攪拌するため泡が多く、水の変わりにキュウリの汁を入れたり、好みでスパイスを効かせるためにニンニクや黒コショウを加えたりします。
地域によって味も酸味の強さも異なり、北西トルコでは泡が多く、攪拌に使う容器の違いで泡がほとんどないものもあります。
トルコの国民的な飲み物であり、家庭で作るほか、レストランやファーストフード店でも提供され、大手清涼飲料メーカーが市場に参入しているためどこのスーパーでも買うことができます。

イスラエル

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・レベン
イスラエルでは、紀元前2000年頃から羊乳を使ったチーズが作られていたと言われ、現在でも羊乳や牛乳を乳酸発酵させて作るレベンや濃縮させた「レベニー」が生産されていています。
レベニーは新鮮なものが好まれますが、オリーブオイルに漬けたり乾燥させて日持ちを良くしたりすることもあります。同様の発酵乳をイラクではレーベン、エジプトではラバンと呼ばれています。

アメリカ

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・ピクルス
塩漬けにしたきゅうりなどの野菜を、酢や砂糖を混ぜた汁に漬け込んで乳酸発酵させて作ります。アメリカではガーキンと呼ばれる小きゅうりを使ったピクルスがポピュラーで、ハンバーガーやホットドックの付け合せとして有名です。
お好みで漬け汁に蜂蜜や唐辛子などのスパイスを混ぜたり、ハーブと一緒に漬け込んだりしたものもあります。

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