メインイメージ メインイメージ

あらゆる場所に存在する乳酸菌

体内にも空気中や海の中にも存在する乳酸菌

乳酸菌はヨーグルトなどの発酵食品を作る微生物として、または腸内環境を整える善玉菌(※1)として知られています。しかし、乳酸菌が生息しているのは発酵食品や人間と動物の腸内だけではありません。口内、母乳、膣内など体内のさまざまな場所に生息しています。

さらに人間を取り巻く環境にも広く存在しています。野菜や穀物の表面に生息しているほか、空気中や土の中、さらには海の中にも生息しています。
これらの乳酸菌は食糧や食品に棲みついて発酵させ、人間の体内へと取り込まれます。乳酸菌は人間と環境の間を循環することで、発酵食品作りや健康維持に貢献しているのです。

(※1)体に有用な働きをする細菌の総称。

体内のさまざまな場所に生息する乳酸菌

乳酸菌は体内のさまざまな場所に生息しています。腸内だけではなく口内、母乳、膣内などにも生息しています。人間だけではなく動物の体内でも同様です。
口内には腸内と同じように細菌群が集まる「口腔内フローラ」が存在します。その中には乳酸菌などの体に有用な善玉菌も生息していて、虫歯や歯周病を引き起こす細菌の増殖を防いでいます。
また母乳に含まれる乳酸菌には、乳児の腸内環境を整える働きがあると考えられています。さらに膣内には「デーデルライン桿菌」という乳酸菌が生息していて、膣炎などを引き起こす雑菌の増殖を防いでいます。

関連記事:ヒト由来の乳酸菌

環境に存在する乳酸菌

乳酸菌は空気中、土の中、海の中など人間を取り巻く環境にも広く存在しています。

植物の表面に生息する乳酸菌

野菜や穀物の葉や茎には植物性乳酸菌が生息しています。植物性乳酸菌が発酵することで、キムチやぬか漬けなどの漬物類、日本酒やワインなどの酒類、味噌や醤油などさまざまな発酵食品が作られます。
その中でも京都の伝統的な漬物である「すぐき漬け」から発見されたラブレ菌は、免疫力を高める優れた作用を持つとして注目されています。
植物性乳酸菌は直射日光や激しい温度変化に晒され、酸や塩分がある環境に耐える必要があり、強い生命力を備えているのが特徴です。

関連記事:植物性乳酸菌の優れている点
関連記事:乳酸菌ラブレ菌の特徴

空気中に存在する乳酸菌

微生物である乳酸菌はとても小さく軽く、空気中を漂ってさまざまな場所に移動して食品や食糧に棲みつきます。

ヨーグルトをもたらしたのは空気中の乳酸菌

人類にヨーグルトをもたらしたのは空気中を漂う乳酸菌とされています。ヨーグルトの起源は紀元前数千年前まで遡り、ある偶然から生まれました。
牛やヤギのミルクを木桶や革袋に入れて保存しておいたところ、偶然入り込んだ乳酸菌によってヨーグルトができたと言われています。
ミルクの優れた栄養価は当時既に知られていて、滋養強壮の薬として重宝されていました。乳酸菌で発酵させることで、冷蔵庫がない時代でもミルクを長持ちさせることができたのです。

関連記事:ヨーグルトの歴史

蔵に生息する乳酸菌

乳酸菌は日本酒、焼酎、味噌、醤油などを醸造する蔵にも生息しています。日本酒や焼酎は酵母菌によってアルコール発酵しますが、乳酸菌も関与しています。
日本酒造りに欠かせない酒母(※2)は乳酸菌なしでは作れません。味噌と醤油は麹菌、乳酸菌、酵母菌の発酵リレーによって作られます。乳酸菌はもろ味(※3)を酸性に変えて酵母菌が活動しやすい環境に整える働きがあります。
最近では予め培養した乳酸菌を添加する方法が主流です。そのような方法が確立されていない時代は、空気中を漂って蔵に棲みついた乳酸菌を活用して醸造が行われていました。
今でも昔ながらの造りを行っている蔵には、木桶や柱、天井などに乳酸菌が棲みつき空気中を漂っています。こうした乳酸菌を活用してその蔵独自の味に仕上げている醸造元もあります。

(※2)麹、仕込み水、蒸コメを混ぜたものに酵母を加えて培養したもの。
(※3)米や大豆などの原料が発酵してやわらかくなったもの。

関連記事:日本人と植物性乳酸菌の関わり

海の中に存在する乳酸菌

日本の伝統的な郷土料理である「鮒寿司」や「かぶら寿司」は、魚の中に生息している乳酸菌が発酵に関与しています。韓国の漬物であるキムチはアミエビ由来の乳酸菌が発酵に関与しています。
いずれも元は海の中を漂っていた乳酸菌です。魚がプランクトンなどと一緒に乳酸菌を取り込んで、水揚げされて野菜や米と一緒に漬け込まれることで、発酵が進んで独特の食品が作られます。

乳酸菌は人間と環境の間を循環している

腸内に生息する乳酸菌は永遠に棲み続けられるわけではありません。乳酸菌が腸内で活動できる期間は短くて2日、長くても数ヶ月程度であり、定期的に便と一緒に体外に排出されます。
体外に出た乳酸菌は環境に放出されて、空気中や土の中を介して、食糧や食品に棲みついてこれを発酵させます。そして再び発酵食品として私たちの体内へと取り込まれて腸内に戻ります。このように乳酸菌は人間と環境の間を循環しているのです。

関連記事:乳酸菌は何日くらい腸にいる

関連記事の一覧