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乳酸菌で大腸がん予防

激増する大腸がん

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大腸がんの患者数は増え続けています。国立がんセンターがまとめた2015年の大腸がん死亡数は、男性は肺がん、胃がんに次いで3位、女性は1位、全体でも2位でした。
患者数はこの20年で倍増しており、毎年、女性は2万2千人以上、男性は2万6千人以上が亡くなっています。

その背景には食生活の変化があります。日本人の食生活が昭和の後半から急速に欧米化したことで、肉をたくさん食べるようになったのに対して野菜の摂取量は減り続けています。
それによって脂質やタンパク質の摂取量は右肩上がりとなり、食物繊維が足りないことが腸内環境の悪化に繋がり、便秘を引き起こし腸内細菌の働きが弱まっています。

大腸がんの原因は悪玉菌

悪玉菌は発ガン促進物質を作り出す

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悪玉菌は脂肪の分解に使われる胆汁酸を酸化させることで、二次胆汁酸という発ガン促進物質を作り出します。

悪玉菌の一つウェルシュ菌は、肉や魚のタンパク質を好み、これらをエサとして急速に増殖して毒素を作り出す性質を持っています。
潜伏期間は約6~18時間あり、12時間以内に下痢や腹痛といった症状を引き起こしますが、タンパク質を分解するときにニトロソアミンという発がん性物質を作り出すことから、大腸がんのリスクを高めることが分かっています。

芽胞を持つことから熱に強く、高温で加熱しても死滅しません。酸素を嫌う嫌気性で、食品の中心部など酸素の薄い場所で増殖するのも特徴です。
健康な人の腸ではほとんど見かけることがなく、悪玉菌が優勢な状態であると増殖しやすいため、ウェルシュ菌を増やさないためには腸内環境を改善する必要があります。

大腸がんのリスクを高める超悪玉菌

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また近年の研究では、ウェルシュ菌よりも悪性の強い超悪玉菌と呼ばれる菌が存在していることが明らかになりました。
その中のひとつがETBF菌(毒素産生型フラジリス菌)です。この菌は大腸に多く住む悪玉菌であり、日本人の10人に1人が感染していると言われています。
ETBF菌は悪玉菌の一つフラジリス菌が優勢になることで生成される菌で、腸内に炎症を引き起こし、悪玉菌以上に大腸がんのリスク因子となる可能性があると考えられています。

腸年齢と大腸がんの関係

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「腸年齢」という言葉があります。人間は見た目だけでなく腸も年齢を重ねると老化していきます。腸の老化は人によって速度が異なるため、必ずしも実年齢と比例するわけではありません。

腸の老化とは

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腸が老化すると、食べ物を消化吸収して、便やガスを排出する働きが弱くなり便秘やお腹の張り、腹痛といった症状を引き起こします。
さらに腸には体全体の約7割の免疫細胞が集まっているため、腸の老化によって免疫力も低下してしまいます。

腸の老化による免疫力の低下は大腸がんに影響する

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また腸の老化によって免疫力が低下すると、ウイルスなどの病原体やがん細胞などを発見して攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞の働きも弱くなると考えられています。
このNK細胞がどれだけ強く働いているかは大腸がんの予防にも大きく関係しているのです。

腸年齢は腸内環境で判断できる

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腸年齢は腸内環境によって判断することができ、年齢を重ねるとともに腸内のビフィズス菌の数は減少し、それに伴って悪玉菌が増殖していきます。
不規則な生活や乱れた食生活、過労やストレス、運動不足、飲酒、喫煙などは腸内環境を悪化させ、善玉菌が減り悪玉菌が増殖してしまいます。このような状態では腸年齢が実年齢を大きく上回ることになります。

乳酸菌が大腸がんリスクを下げる

生きた乳酸菌やビフィズス菌は腸内で乳酸や酢酸を作り出すことで、腸内環境を善玉菌の活動に適した弱酸性に変え、善玉菌の増殖を促す作用があります。
善玉菌が増殖するとウェルシュ菌やETBT菌などの悪玉菌が抑制され、ニトロソアミンや二次胆汁酸の生成を減らすことができます。

さらに腸管免疫に働きかけることで免疫力が向上します。また乳酸菌の中にはNK細胞に働きかける作用を持つ菌もあり、このような菌を摂取することで、がん細胞を減らし大腸がんのリスクを下げることができます。
胃酸や胆汁で死滅せずに生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌のほうがより高い効果があるとされています。
しかし、死んだ菌であっても善玉菌のエサとなることで増殖を助けることができ、一定の効果が期待できます。

大腸がんの予防効果が認められた乳酸菌の種類

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・シロタ株
シロタ株は後にヤクルトの創業者となる代田稔博士によって発見された乳酸菌です。高い整腸作用があり善玉菌を3倍に悪玉菌を1/5に減らすほか、大腸がんの予防効果も期待されています。

普通の人よりも大腸がんリスクが4~7倍高い大腸腫瘍を2個以上持つ40~65歳の男女380名を対象に行った試験では、腫瘍を全て摘出して完治させた後に、4つのグループに分けて、それぞれ異なる食事指導を行い、このうち2つのグループにはシロタ株を摂ってもらいました。
その結果、シロタ株を摂ったグループでは、腺腫の発生がシロタ株を摂っていないグループよりも若干低くなることが認められました。
さらに腺腫の異型度(正常な細胞に比べてどれくらい形状が異なっているかを示す指標)で中等度以上の異性度を持つ腺腫の発生を調べました。
その結果、シロタ株を摂った人は相対危険度が2年目で20%、4年目では35%低下することが認められました。

・LKM512株
1997年に発酵乳から発見されたビフィズス菌で、酸に強く生きて腸まで届いて大腸で増殖するのが特徴です。
LKM512株には高い整腸作用がありますが、協同乳業が行った研究によると、大腸で増殖することでアミノ酸の一種であるポリアミンが増えることが分かっています。
このポリアミンは腸管バリア機能を高めてくれる物質ですが、DNAを安定化させる働きもあり、大腸ガンの原因となるDNAの損傷を修復してくれます。

・BB536株
森永乳業が1969年に健康な乳児から発見したビフィズス菌です。酸や酸素に強い特性を持ち、生きて腸まで届きます。
BB536株は高い整腸作用のほか、病原菌やウイルスの感染予防、アレルギー予防などさまざまな作用があることが分かっていますが、ETBF菌を除菌することから大腸がんの予防効果も期待されています。
ETBF菌を保有する健康な成人32名を対象に行った試験では、二つのグループに分け、一方にはBB536株を32億個含む入りヨーグルトを8週間摂ってもらいました。
その結果、BB536株入りヨーグルトを摂ったグループのみETBF菌が摂取前の1/3程度に減少することが確認されました。なお摂取を止めるとETBF菌の数は試験前と同程度に戻りました。

・k-1株
米から分離した植物由来の乳酸菌で、生きて腸まで届くことで腸内にビフィズス菌を増やし便秘を改善する効果があります。
さらにK-1株には食事由来の変異原性物質(発がん性物質)を減少させる効果が確認されています。私たちが普段食べる肉は焦がすことで変異原性物質の量が一気に増えてしまいます。
このK-1株を使ったヨーグルトを一緒に摂ると、焦げた肉を食べても変異原性物質が減少します。この効果は生菌でも死菌でも変わりません。

食生活の改善も必要

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大腸がんの予防には食生活の改善も必要です。肉類に偏った食事は腸内の悪玉菌を増殖させ、ニトロソアミンや二次胆汁酸を増やす原因になってしまいます。
肉類の食べ過ぎには注意し、善玉菌のエサとなる食物繊維が豊富に汲まれた野菜、果物、豆類をしっかり摂る必要があります。
ただし食物繊維の過剰摂取は逆効果です。最近の研究ではサプリメントなどによって食物繊維を摂り過ぎたり、特定の食物繊維のみを長期間摂ったりすることで、がんの前段階である大腸腺腫が発生しやすいことが分かっています。
そこで乳酸菌を多く含むヨーグルトや発酵食品を積極的に食事に取り入れましょう。日本人は昔から漬物、味噌、醤油、甘酒といった発酵食品を多く摂ることで健康を維持してきました。
韓国のキムチや中国のザーサイにも豊富な乳酸菌が含まれています。これらを多く摂ることで腸内の腸内環境が改善され、ニトロソアミンや二次胆汁酸の発生も減っていきます。

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