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乳酸菌ラクトバチルスの特徴

ラクトバチルス属とは

乳酸桿菌

乳酸菌は「糖を分解して乳酸を多量に作り出す菌」の総称です。その中にはさまざまな種類の菌が存在し、大きく分けて「乳酸桿菌」「乳酸球菌」「ビフィズス菌」の3つがあります。
ラクトバチルスはこのうち乳酸桿菌に含まれる菌属で、乳酸桿菌という場合、一般的にラクトバチルスを指すことがほとんどです。

「菌属」を表す大きなカテゴリー

さらに乳酸菌は「菌属」「菌種」「菌株」に分類され、この3つの組み合わせによって学名がつけられています。例えばガセリ菌SP株の場合は、ラクトバチルス・ガセリ・SBT2055株(SP株)となります。
つまりラクトバチルスという乳酸菌が存在するわけではなく、ラクトバチルス属という大きなカテゴリーがあり、その中にたくさんの菌種菌株が存在しているのです。

乳酸菌の最も多くを占める

ラクトバチルス属は乳酸菌の中で最も多くを占めていて、その菌種は180種類以上あると言われています。主な菌種としては、アシドフィルス、カゼイ、ガセリ、プランタラムなどがあり、そこからさらにシロタ株、OLL1073R-1株、L-92株、SP株などの菌株に分かれています。同じラクトバチルス属の乳酸菌でも、その働きは菌株によって異なります。

ラクトバチルス属の特徴

ラクトバチルス属にはいくつかの共通した特徴があります。

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乳酸桿菌であるため、形は細長い棒状または円筒状をしています。グラム染色によって紺青色または紫色に染色されたグラム陽性であり、酸素のあるなしに関わらず生息することができる通性嫌気性、または酸素を利用することができる微好気性の菌です。

容易に分類することができるため、ブルガリア、カゼリ、アシドフィラス、カゼイなどの菌種は古くからヨーグルト作りの種菌として使われてきました。
その多くは胃酸や胆汁酸などの消化酵素に強く、酸素があってもなくても生息できるため、口や腸など人や動物の消化管に広く生息しています。また女性の膣内に生息するデーデルライン桿菌もラクトバチルス属の菌です。

ラクトバチルス属の分類

ラクトバチルス属は糖から乳酸のみを産生しホモ発酵するものと、糖から乳酸のほかにアルコール、酢酸、二酸化炭素を産生しヘテロ発酵するものがあり、代謝に基づいて3つに分けることができます。

偏性嫌気性ホモ発酵
アシドフィルス、ブルガリア、ガセリ、デルブルッキーなど
通性嫌気性ヘテロ発酵性
プランタルム、カゼイ、カルバタス、サケイなど
偏性嫌気性ヘテロ発酵性
ブレビス、ファーメンタムなど

ラクトバチルス属の主な乳酸菌

カゼイ菌

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1891年にドイツの研究者フロイデンライヒによって発見されました。フロイデンライヒはチーズの微生物を研究する中で、チーズに独特の風味をつける細菌を発見し、バチルス・アルファと命名します。
これがカゼイ菌であり、1904年にバチルス・カゼイという分類名が発表されました。カゼイとはラテン語でチーズを意味しています。これまでの研究でカゼイ菌は、整腸作用や免疫調整作用などのさまざまな効果があることが分かっています。
主な菌株としては、後にヤクルトの創始者となる代田稔博士が発見したシロタ株、日清ヨークが保有するNY1301株、亀田製菓が保有する米由来のK-1株と酒粕由来のK-2株などがあります。

ブルガリア菌

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1905年にブルガリア出身の医学部生スタメン・グリゴロフによって発見されました。グリゴロフは自分の出身地であるブルガリアで古くから食べられてきたヨーグルトの研究に没頭し、やがて細長い形をした菌がいることを突き止めます。
ブルガリア菌発見の数年後、ロシアの微生物学者イリヤ・メチニコフは「ヨーグルト不老長寿説」を発表し、ブルガリアヨーグルトを一躍有名にしました。
ブルガリア菌は乳糖を好んでエサとする性質を持ち、ヨーグルトやチーズなどの酪農製品にしか生息しない菌です。その多くはストレプトコッカス属のサーモフィルス菌と共存していて、二つの菌の相乗効果によってヨーグルトは作られます。
主な菌株としては、ヨーグルトの種菌としてサーモフィラス菌1131株と組み合わせて使う2038株、明治乳業が保有する1073R-1株などがあります。

アシドフィルス菌

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1900年にオーストリアの研究者モローによって乳児の腸内から発見されました。その後の研究では、乳児の腸内だけでなく、成人や動物の腸内、口腔、膣内など幅広く生息していることが分かっています。
モローは「アシドフィルス菌をはじめとする腸内常在菌は、体内に侵入してきた病原菌などから身を守る役割を果たしているのではないか」と考えて研究を行っていました。
近年の研究では、整腸作用や感染予防効果などがあることが報告されています。アシドフィルス菌はヨーグルトなどの乳製品作りに使われる代表的な乳酸菌の一つです。
主な菌株としては、カルピスが保有するL-92株、オハヨー乳業が人の腸から分離したL-55株などがあります。

プランタルム菌

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1919年にデンマークの研究者オルラ・ヤンセンによって発見されました。ブランタルムとはプラント(植物)を意味し、植物由来の発酵物から分離した植物性乳酸菌です。
その特徴は塩に強く、日本の漬物のほか、韓国のキムチやドイツのザワークラウトなど塩分の濃い漬物類を発酵させ、腐敗も防ぎます。
ブランタルム菌はさまざまな食品作りに利用されていて、漬物以外ではワイン、ソーセージ、ハムなど世界中の発酵食品に使われています。
近年の研究では、ブランタルム菌の一部の菌株には免疫力を高める作用があることが報告されています。
主な菌株としては、ザワークラウトから分離したHSK201株、キムチから発見されたCJLP133株などがあります。

ガセリ菌

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もともとはアシドフィルス菌に属していましたが、近年になって独立した菌種に再分類されました。人の腸内に多く生息していて、ビフィズス菌とともに悪玉菌を抑制して腸内環境を整える効果の高い善玉菌の代表です。
胃酸や胆汁酸に強く、生きた腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌であることから、ヨーグルトをはじめとする乳製品作りにも活用されています。
主な菌株としては、雪印メグミルクが日本人の腸から分離したSP株、カルピスが保有するCP2305株があります。

ロイテリ菌

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古くからその存在は知られ、20世紀初頭には乳酸菌として認識されていましたが、このとき誤ってファーメンタム菌に分類されてしまいました。
その後、1980年に独立した菌種としてラクトバチルス属に再分類されました。菌株の多くはスウェーデンに本社を持つバイオ・テクノロジー企業のバイオガイアが保有しています。ロイテリ菌は自然界に広く存在し、その多くは肉や乳製品などの食品から発見されています。
さらに、1960年代にドイツの微生物学者ゲルハルト・ロイター博士によって最初にヒトの糞便や腸から発見され、その後の研究では、ヒト以外にも多くの乳類や鳥類の消化管に生息していることが確認されました。
主な菌株としては、高い整腸作用とピロリ菌を抑制する効果が認められたプロテクティス株と、口腔フローラを改善し歯周病や歯肉炎などの口内トラブルを予防するプロデンティス株があります。

ラブレ菌

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正式名称はブレビス亜種コアギュランス・KB290株、京都の伝統的な漬物である「すぐき漬け」から分離した植物性乳酸菌で、1993年にルイ・パストゥール医学研究所の岸田綱太郎博士によって発見されました。
ラブレ菌は胃酸や胆汁で死滅することなく生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌です。植物性乳酸菌は腸内で生き抜く力が強いものが多いですが、ラブレ菌はその中でもトップクラスの生残率を誇ります。
EPSという粘り成分を生成する性質を持ち、それによって消化液に対して強い耐性を持つのではと考えられています。これまでの研究では、高い整腸作用、免疫力を高める作用、インフルエンザ予防効果などが確認されています。

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