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腸内に生息する善玉菌の効果とは

体に有用な働きをする善玉菌

善玉菌と名づけられた理由

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善玉菌や悪玉菌という言葉をよく耳にします。善玉菌とは体に有用な働きをする菌のことで、それに対して悪玉菌は体に害を及ぼす菌のことです。

この言葉を最初に使ったのは日本で腸内細菌研究の第一人者である東京大学の光岡知足名誉教授で、1970年頃のことです。
当時は菌と言えばコレラ菌や赤痢菌など病原性を持つ菌ばかりが有名でした。体に有用な働きをする菌の存在があまり知られていなかったので、
そんな中でこれまでの定説を覆す、ビフィズス菌が成人の腸内でも優勢である事実が明らかになります。ビフィズス菌は乳酸菌と並んで善玉菌の代表的な存在です。

ところが当時は赤ちゃんの腸内にしか生息しておらず、成人の腸内では別の菌が優勢であると考えられていたです。
この歴史的な発見をきっかけに、ビフィズス菌のように体に有用な菌の存在を知ってもらおうと光岡氏が用いたのが「善玉菌」という言葉です。
当時は「生物に善も悪もない」と批判もあったそうです。しかし、光岡氏は腸内細菌と健康の関わりを多くの人に理解してもらうために、あえて菌を善玉菌と悪玉菌に分ける必要があったと言います。

私たちの腸内に生息する善玉菌

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私たちの腸内に生息している善玉菌は、主にビフィズス菌と乳酸菌です。なお正確にはビフィズス菌は乳酸菌の仲間ですが、異なる善玉菌として区別されることがあります。
乳酸菌は酸素があってもなくて生育しますが比較的酸素が薄い環境を好むため、主に小腸に生息しています。一方のビフィズス菌は酸素がある環境では生育できない性質を持つため、口から遠く酸素が薄い大腸に生息しています。
実は人間の腸内に生息する善玉菌の95%以上はビフィズス菌です。乳酸菌も生息していますが、数が少ないため体に対してあまり大きな影響はありません。

成人の腸内に生息する菌の数をみると、ビフィズス菌は便1gあたりに100億個以上生息しています。一方の乳酸菌はその1/100~1/1000程度です。
光岡氏は「人はビフィズス菌動物」と言います。私たち人間はビフィズス菌と共生することで進化してきたのです。

善玉菌が体にもたらす効果

発酵によって他の善玉菌を活性化して悪玉菌を抑制する

では私たちの腸内に生息するビフィズス菌や乳酸菌は、体にどのような効果をもたらすのでしょうか? その前にビフィズス菌や乳酸菌の性質について知る必要があります。

ビフィズス菌も乳酸菌も、糖を分解して乳酸などの有機酸を生成する性質があります。ビフィズス菌は乳酸のほかに殺菌力の強い酢酸を多量に生成します。
乳酸菌はブドウ糖100に対して50の乳酸を生成します。これらの有機酸がたくさん作られると腸内のpHが下がり、腸内環境が酸性に近づきます。
これはヨーグルトやチーズ、ぬか漬けやキムチなどの乳酸発酵させた漬物が作られる過程で起こる発酵と全く同じです。つまり善玉菌は腸内で糖を分解して有機酸を作り出すことで発酵を行っているのです。
善玉菌は弱酸性の環境を好みます。一方の悪玉菌はアルカリ性の環境を好み、pH6.0以下の酸性では発育することができません。腸内の発酵が進むと他の善玉菌が活性化されて、悪玉菌を抑制することができます。

腸内に生息する善玉菌の効果

腸内に生息する善玉菌であるビフィズス菌と乳酸菌は発酵を行うことで、腸内環境を整えて主に以下の有用性を発揮します。

・整腸作用
・潰瘍性大腸炎などの腸疾患の予防
・消化吸収の促進
・ビタミンの合成
・病原性大腸菌O157などの感染予防
・免疫力の向上

整腸作用

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腸内に生息する善玉菌の働きが活発であれば、発酵が進むことで他の善玉菌が活性化され、悪玉菌が抑制されます。腸内環境が整うと、便秘やお通じの乱れ、お腹の張りや腹痛、下痢といったお腹の不調の改善に繋がります。

さらに大腸に生息するビフィズス菌は酢酸を生成しますが、この酢酸は、食べ物を動かしながら排出に導く腸のぜん動運動を促してくれます。
ぜん動運動がしっかり働くことで自然に便意を感じることができ、便通が良くなります。このようなことからビフィズス菌が多く生息する腸内環境では、適度なお通じが保たれます。

潰瘍性大腸炎などの腸疾患の予防

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潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にただれや潰瘍ができる病気です。20~30代の若い世代に多く、近年では患者数が増加傾向にあります。
下痢や腹痛、血便などの症状を引き起こし、良くなっても症状が再発することが多く完治が難しいことから、国によって難病に指定されています。

この潰瘍性大腸炎を予防する効果が期待されているのが、ビフィズス菌が生成する酢酸です。強い殺菌力を持つ酢酸が大腸で大量に作られることで、腸の粘膜をコーティングしてバリア機能を高めることができると考えられています。

消化吸収の促進

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腸内細菌は未消化の食べ物に含まれる栄養素をエサにして活動しています。そのため消化吸収を促す働きがあります。
その中でも善玉菌は菌体が作り出す酵素によって、食物繊維などの難消化性の栄養素をある程度まで消化し、腸にかかる負担を軽減しています。

ビタミンの合成

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ビフィズス菌はビタミンB群、ビタミンK、葉酸、ビオチンなどのさまざまな種類のビタミンを合成する働きがあります。

病原性大腸菌O157などの感染予防

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ビフィズス菌が作り出す酢酸には腸の上皮を丈夫にする作用があります。酢酸の強い殺菌力によって腸菅バリア機能が高まり、病原性大腸菌O157が作り出す毒素が腸壁から体内に吸収されるのを防いでくれます。その結果として、O157の感染リスクを下げる働きが期待できます。

免疫力の向上

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私たちの体内にはウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫システムが備わっています。この免疫システムを動かしているのが免疫細胞です。
その約7割は腸に集中し、これを「腸管免疫」と呼びます。善玉菌は腸内環境を整えることで免疫細胞を刺激して、免疫を調整する役目を担っています。

善玉菌の効果を引き出す方法

乳酸菌やビフィズス菌を摂る

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ヨーグルトなどの食品から乳酸菌やビフィズス菌を積極的に摂ることで、腸内に生息する善玉菌の効果を引き出すことができます。
食品から摂った乳酸菌やビフィズス菌が生きて腸まで届けば、乳酸や酢酸が生成されて腸内環境が整います。それによって腸内にもともと生息している他の善玉菌が活性化して増殖を促すことができます。
また、死滅した乳酸菌には免疫細胞を刺激して免疫力を高める効果が期待されています。さらに近年の研究では、乳酸菌が死滅していても他の善玉菌のエサになり一定の整腸作用があることが分かっています。
食事を工夫して体に有用な善玉菌を積極的に摂り、腸内環境の改善や免疫力の向上に繋げましょう。

食べ物から摂った乳酸菌やビフィズス菌は腸内に定着できない

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とはいえ、食品から摂った乳酸菌やビフィズス菌が腸内で直接増えるわけではありません。腸内フローラは人それぞれ異なるため、菌によって合う合わないがあるからです。
どんなに優れた効能を持つ菌であっても、自分の腸内環境に合わなければ効果を実感することはできません。
そもそもほとんどの菌は腸内にもともと生息している常在菌に勝つことができず、数時間から数日程度で便として排出されてしまいます。
ですから毎日のように継続して摂ることで、常に新しい菌を腸に送り込む必要があります。

善玉菌のエサを摂ろう

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腸内で善玉菌が活動するためにはエサが必要です。ビフィズス菌や乳酸菌は糖をエサにして活動しています。
また食べ物から摂った乳酸菌やビフィズス菌が腸内で直接増えず定着もできない以上は、自分がもともと持っている善玉菌を増やす必要があります。そのために摂りたいのが食物繊維とオリゴ糖です。

糖の代表である砂糖は、単糖類であるブドウ糖と果糖が結合した二糖類に分類されます。糖が二つしかくっついていないため、小腸で素早く分解されて体内に吸収されます。
これでは善玉菌がエサとして活用することができません。一方の食物繊維は糖が3000~50万個結合した多糖類です。小腸でほとんど分解されないため善玉菌のエサになります。
オリゴ糖は糖が3~10個結合した少糖類です。こちらも小腸で分解、吸収されにくい性質を持つため善玉菌のエサになります。
野菜と果物には食物繊維もオリゴ糖も含まれていますから、野菜と果物をたくさん摂って腸内に善玉菌のエサを供給しましょう。

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