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乳酸菌は鼻炎に効く?

アレルギー性鼻炎と腸内環境の関係

増えるアレルギー性鼻炎患者

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いつまでも続く辛い鼻水や鼻づまり、くしゃみ、それはもしかしたらアレルギー性鼻炎ではないでしょうか。
日本人の4人に1人が発症すると言われるアレルギー性鼻炎ですが、その患者数は1998年と2008年でおよそ1.3倍と著しく増えています。
アレルギー性鼻炎は季節性と通年性に分かれます。季節性アレルギー性鼻炎は毎年同じ時期に発症し、スギやヒノキなどの花粉を原因とするいわゆる花粉症です。
一方、通年性アレルギー性鼻炎は季節に関わらず一年を通して症状が続き、ダニ、ホコリ、ハウスダスト、カビ、ペットの毛など原因はさまざまで人によって異なります。

腸管免疫の活性化が症状緩和につながる

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実はこのアレルギー性鼻炎は腸内環境と密接に関係していることが分かっています。アレルギー性鼻炎などのアレルギーは、免疫機能の低下と免疫バランスの乱れが原因です。
私たちが持つ免疫細胞の約7割は腸に集中していて、腸を中心に構成される免疫系のことを腸管免疫と呼びます。
腸管免疫によって食べ物のような体に害のないものと、ウイルスや細菌といった体に害を及ぼす物質を区別し、有害物質が侵入した場合にはIgA抗体を作り出して感染を防いでいるのです。
免疫力を高めることでアレルギー症状を緩和することができますが、そのためには腸内環境を改善して腸管免疫の働きを活性化する必要があります。

免疫力を高める乳酸菌

多くの乳酸菌には腸管免疫に働きかけることで免疫力を高める作用があり、ヨーグルトや乳酸菌飲料を摂ることで、アレルギー症状が緩和されるという研究データも報告されています。
また、アレルギーを発症する人は腸管免疫が作り出すIgA抗体が少ない傾向にあります。IgA抗体はアレルゲンが体内に吸収されるのを抑える役目を果たしていて、アレルギー性鼻炎の場合は、鼻の中に入り込んだホコリやハウスダストをしっかり捕らえることで、アレルギーを起こすことなく体外へと排出させています。
IgA抗体の量が多い人はアレルギーが起きにくい体質であると言えます。乳酸菌にはこのIgA抗体を増やす作用があることも分かっています。

免疫バランスを整える乳酸菌

アレルギー性鼻炎の原因は免疫力の低下のほかに、免疫バランスの乱れが原因と先述しましたが、体内に侵入したウイルスや細菌を異物と判断し、感染を防ぐため指令を出すのが免疫細胞の一つヘルパーT細胞です。
ヘルパーT細胞にはTh1とTh2の二種類があり、Th1は細胞性免疫を担当し、Th2は抗体を中心とした免疫を担っています。
これらの働きが正常であれば何も問題は起こりません。しかし、本来は体に害を及ぼさないホコリ、ハウスダスト、花粉などを異物=敵と判断してしまうと、Th2が抗体の製造工場であるB細胞に働きかけて、IgE抗体と呼ばれるものを大量に作り出すことで自らの体を攻撃してしまいます。

乳酸菌にはこのヘルパーT細胞のTh1とTh2のバランスを整えることで、IgE抗体の生成を抑える作用が認められています。
Th1はインターフェロンを作ることでTh2に働きかけIgE抗体の生成を抑える役目も果たしていますが、乳酸菌によってTh1が活性化されると、Th2が優位な状態からTh1が優位な状態へと変わり、IgE抗体の量も減り、アレルギー症状が改善されます。

アレルギー性鼻炎を改善するには

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乳酸菌を摂ることで免疫力が高まり、免疫バランスも整えられることが分かりました。ヨーグルトなどを習慣的に摂ることはアレルギー性鼻炎の症状の改善に効果的です。

しかし、アレルギーの発症は生活習慣とも関係しています。乳酸菌を摂って腸内環境を整えるだけでなく、食生活の乱れやストレスといった生活習慣を改善し、ヘルパーT細胞が誤動作を起こす原因となるホコリ、ハウスダスト、花粉といったアレルゲンを掃除などで出来るだけ取り除く必要があります。
また乳酸菌の摂取はあくまで民間療法で効果が保証されているわけではありません。症状が重い場合は耳鼻科で薬を処方してもらいましょう。

通年性アレルギー性鼻炎の改善効果が認められている乳酸菌

乳酸菌にはさまざまな種類があり効果もそれぞれ異なります。以下の乳酸菌はアレルギー症状を改善する効果が認められています。

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・L-92乳酸菌
カルピスが保有する多くの乳酸菌の中から、アレルギー症状を引き起こすIgE抗体の生成を抑制する作用を持つものとして厳選した乳酸菌です。L-92乳酸菌は通年性アレルギー性鼻炎への有効性が認められています。

ダニやハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎を持つ25名を対象に行った試験では、L-92乳酸菌を含む食品を8週間摂ってもらいました。
その結果、L-92乳酸菌を摂ることで鼻の症状と目の症状に改善傾向が見られることが確認されました。(*1>

・クレモリス菌FC株
カスピ海ヨーグルトでおなじみの乳酸菌で、生命力がとても強く胃酸や胆汁に負けることなく生きて腸まで届きます。
クレモリス菌FC株はIgE抗体の血中レベルを下げる作用が認められていて、アレルギー症状を改善する効果が期待されています。

健康な高齢者70名を対象に行った試験では、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトまたはクレモリス菌FC株を含まない発酵乳を、1ヶ月間の休止期間を挟んで1日150g1ヵ月間摂ってもらい、免疫系に与える影響について調べましょう。
その結果、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトを摂ったグループでは、摂る前よりも血液中のIgEレベルが低下することが認められました。(*2>

・フェリカス菌
もともとは人の体内に生息していた乳酸菌で、免疫力を高める効果が高く、一般的な乳酸菌よりも小さいため腸の奥まで行き届きます。
多くの乳酸菌では生きて腸に届くことでより高い効果が期待できますが、フェリカス菌は死滅した状態で摂ったほうが効果的であることが報告されています。

伊藤園の中央研究所が行った試験では、加熱殺菌処理したフェリカス菌入り乳性飲料を摂ることで、通年性アレルギー性鼻炎の症状を緩和することが確認されています。
試験では通年性アレルギー性鼻炎を持つ40名を2つのグループに分けて、一方にはフェリカス菌を1000億個含む飲料を1日1回1本8週間摂ってもらいました。
アレルギー性鼻炎の症状については医師の所見と問診、被験者の自覚症状を評価し、免疫機能についてはTh1/Th2バランスなどについて測定しました。
その結果、摂取前後で鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状に改善傾向が見られ、Th1とTh2のバランスも改善することが認められました。(*3>

・KW乳酸菌
正式名称はラクトバチルス・パラカゼイ・KW3110株、キリンと小岩井乳業の共同開発で発見された乳酸菌です。強い酸耐性を持つことから、生きて腸まで届いて免疫力を高める効果が期待されています。
KW乳酸菌はTh1とTh2のバランスを整えることでIgE抗体の生成を抑制し、花粉症などのアレルギー症状を改善する作用が認められています。

アレルギーを発症させたマウスにKW3110株を毎日1mg摂らせたところ、KW31110株を摂っていないマウスよりもIgE抗体の量が低くなることが確認されました。(*4>

・乳酸菌LP0132
正式名称はラクトバチルス・プランタルム・YIT0132、ヤクルトが発見した植物性乳酸菌です。
新しい乳酸菌であることから、2017年3月現在でこの菌を採用している商品は、ヤクルトが販売する宅配専用商品のみとなっています。

乳酸菌LP0132を含む発酵果汁飲料の飲用試験では、通年性アレルギー鼻炎の症状を改善する効果が確認されました。
試験では通年性アレルギー性鼻炎を持つ33名を対象に、一方のグループには乳酸菌発酵果汁飲料を1日1本8週間摂ってもらい、飲用前と飲用期間中の鼻炎症状、飲用前と飲用8週間後の血中免疫パラメーターを調べました。
その結果、乳酸菌LP0132を含む乳酸菌発酵果汁飲料を摂ったグループは、摂っていないグループと比べて、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状スコアが改善することが認められました。
さらに飲用前と比べてTh2の働きが抑制され、Th1とTh2のバランスにも改善傾向が見られました。(*5>

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