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生きたまま腸に届くクレモリス菌の特徴とは

クレモリス菌はカスピ海ヨーグルトを作る乳酸菌です。EPSという特有の粘り成分を産生し、胃酸に強く生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌です。 これまでの研究では整腸作用のほか、免疫力の向上、アレルギー症状の緩和、血糖値の抑制、コレステロールの改善などの効果が認められています。

クレモリス菌とは

カスピ海ヨーグルトを作る乳酸菌

クレモリス菌は楕円形の菌体がくっついた乳酸連鎖球菌です。カスピ海ヨーグルトを作る乳酸菌として知られています。代表的な菌株としてはFC株、GCL1176株、CHCC2907株があります。

カスピ海ヨーグルトは黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方で古くから食べられているヨーグルトです。この地域は100歳以上の長寿者が多いことで世界中から注目されています。

1986年、長寿と食生活の関係を調べていた医学博士の家森幸男氏(現京都大学名誉教授)は、コーカサス地方を訪れて栄養分析のためにヨーグルトを日本に持ち帰りました。 このヨーグルトから分離されたのがFC株です。家森氏がFC株を知人に分けたことをきっかけに、日本中にカスピ海ヨーグルトが広まりました。クレモリス菌はカスピ海ヨーグルトに独特のトロみと粘り気をもたらしています。

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生きて腸まで届く

クレモリス菌は生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌です。ブルガリア菌をはじめとする大半の動物性乳酸菌(※1)は酸に弱く、摂取しても大部分が胃酸で死滅してしまいます。

一方のクレモリス菌は動物性乳酸菌でありながら酸に強い性質を持ち、生きて胃を通過して腸内で働くことができます。

(※1)牛乳などに生息する動物由来の乳酸菌。

特有の粘り成分を産生する

クレモリス菌は発酵によってEPSと呼ばれる独特の粘り気を持つ多糖を産生するのが特徴です。このEPSがカスピ海ヨーグルトに粘り気をもたらしています。

いくつもの糖が結合したEPSは、消化酵素で分解されずに大腸に到達することが分かっています。さらに胃酸などの消化液にも強いことから、クレモリス菌を生きて腸まで届ける働きがあると考えられています。

これまでの研究でEPSには免疫力を高めたり、血糖値を下げる働きがあることが分かっています。

低温で発酵する

ヨーグルトを作るほとんどの乳酸菌は35~40℃前後で発酵しますが、クレモリス菌は20~30℃という常温に近い低い温度で発酵します。
温度管理に気を使わなくても発酵するため、ヨーグルトメーカーがなくても家庭で容易にカスピ海ヨーグルトを作ることができます。

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クレモリス菌の効果

整腸作用

クレモリス菌には優れた整腸作用があり、腸内で乳酸をたくさん生成して腸内環境を整えます。ビフィズス菌などの体に有用な善玉菌の増殖を促して、便秘や下痢を引き起こす悪玉菌を抑制してくれます。

【クレモリス菌の効果を示す試験結果】

女子大生75名にクレモリス菌FC株を含むヨーグルトまたはヨーグルト風の牛乳デザートを、1日200g、2ヶ月間摂ってもらいました。 その結果、クレモリス菌FC株を含むヨーグルトを摂ったグループでは、排便量、排便回数、排便日数が改善されることが確認されました。(参考元1)

関連記事:ヨーグルトに含まれる乳酸菌で腸内環境を改善

免疫力を高める

これまでの研究でクレモリス菌が産生するEPSには、免疫細胞を活性化して「サイトカイン」(※2)の生成を促す作用があることが分かっています。

サイトカインが作られると免疫力が高まり、風邪やインフルエンザなどの感染症に罹りにくくなります。またFC株にはインフルエンザワクチンの効果を高めたり、症状の悪化を防ぐ効果が認められています。

(※2)信号を送ることで周囲の細胞に影響を与え、ウイルスの感染を防いだり免疫反応を調整するたんぱく質。

関連記事:乳酸菌で免疫力の低下を防ぐ

アレルギー症状を緩和する

クレモリス菌にはアレルギー症状の原因である「IgE抗体」の量を減らす作用があり、アレルギー症状を緩和する効果が認められています。このうちFC株はアトピー性皮膚炎の症状を緩和する効果が認められています。

関連記事:アレルギー症状を改善する乳酸菌

血糖値の上昇を抑える

FC株には食後の血糖値上昇を緩やかにする効果が認められています。マウスにブドウ糖とFC株を含むヨーグルトを与えたところ、ブドウ糖と牛乳を与えたマウスに比べて血糖値の上昇が抑えられることが確認されています。(参考元2)

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コレステロールを改善する

FC株には善玉コレステロール(HDL)を増やす働きがあります。善玉コレステロールが増えると血液中の余分なコレステロールが肝臓に回収されるため、コレステロール値の低下に繋がります。

またGCL1176株にはコレステロール値を下げる働きがあります。コレステロール値が上がる原因には、代謝バランスが関係する内因性のものと食生活が関係する外因性のものがあります。GCL1176株はどちらを原因とする高コレステロールにも効果があることが分かっています。

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参考元1:整腸効果|健康効果|カスピ海ヨーグルト研究会
参考元2:生活習慣病への効果|健康効果|カスピ海ヨーグルト研究会

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