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乳酸菌で骨を丈夫に

女性や高齢者に多い骨密度の低下

いま中高年世代を中心に増え続けているのが、骨や関節などの衰えによって運動機能が低下するロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)です。その原因の一つはカルシウム不足や加齢による骨密度の低下です。
変形性腰椎症や骨粗しょう症などの疾患のうち一つ以上が該当する推定患者数は、男性は2100万人、女性は2600万人、合わせて4700万人に達するという試算もあります。

また、更年期の女性はホルモンバランスの乱れによって骨密度が低下して、骨粗しょう症になりやすい傾向にあります。これは更年期障害によって、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が低下することで引き起こされます。
さらに若い世代の間でも骨密度の低下が問題になっています。スタイルを気にする女性はダイエットを頻繁に行いますが、無理な食事制限を行うとカルシウムと骨の形成を促すビタミンの摂取不足によって、骨の形成が妨げられて骨密度の低下に繋がってしまいます。
もともと日本人はカルシウムの摂取量が不足しているため、加齢や食生活の乱れによる骨密度の低下に気を配らなければいけません。

骨と腸内環境の関係

ビタミンKは腸内で合成できる

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骨を丈夫にするためには骨の原料であるカルシウムを摂ることも大切ですが、骨の形成を促すビタミンの存在も忘れてはいけません。
その中でもビタミンKは血液を凝固する働きがあることで知られていますが、骨の形成にも深く関与しています。ビタミンKは血液中に溶け込んだカルシウムを骨に取り込む働きをしています。
発酵によって作られるビタミンであり納豆などに多く含まれていますが、腸内で合成することができるビタミンでもあります。腸はビタミンの製造工場であり、食品からの摂取では不足するビタミンを腸内細菌が合成しています。

骨の形成を促すためには善玉菌を活性化する必要がある

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骨の形成に欠かせないビタミンKの合成を促すためには腸内環境を整える必要があります。
私たちが食事で摂った食べ物はまず胃で大まかに消化されて小腸に送られます。小腸では消化酵素の働きによってたんぱく質や脂質などの栄養素が分解されて吸収されます。
しかし、全ての栄養素が小腸で吸収されるわけではなく、吸収しきれなかった栄養素は食べかすと一緒に大腸に送られます。
これらの栄養素は腸内細菌のエサとなります。このうちビフィズス菌を中心とした善玉菌は、食べ物に含まれる糖や食物繊維をエネルギー源に活動しています。
腸内の善玉菌が活性化されると、乳酸や酢酸などの有機酸を作り出し、pHを下げて腸内環境を酸性に近づけてくれます。これはヨーグルトなどの発酵食品ができる過程で起こる発酵と同じです。
つまり腸内の善玉菌が活発であれば発酵が進み、ビタミンKを含むビタミンが合成されて、骨の形成を助けてくれます。

悪玉菌が増殖するとビタミンKの合成が妨げられる

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悪玉菌は小腸で吸収しきれなかった肉類などに含まれるたんぱく質や脂質をエサにして増殖し、インドールやスカトール、アンモニアといった腐敗物質を作り出します。
悪玉菌が増殖すると腸内腐敗が進んで、ビタミンKの合成を妨げてしまいます。ただし、悪玉菌の中でも大腸菌はビタミンKを含むビタミンを合成する働きをしますから、悪玉菌をなくせば良いというわけではありません。
大事なのは腸内細菌のバランスです。善玉菌が優勢であれば悪玉菌が暴れることはなく、それぞれの腸内細菌が体の維持に必要な役割を果たしてくれます。

ビフィズス菌が骨の形成を促す

ビタミンKを合成するビフィズス菌

骨密度の低下を防ぐために重要な働きをしているのがビフィズス菌です。私たちの腸内には100兆個以上もの腸内細菌が生息していますが、成人の腸内ではこのうち約2割が善玉菌であり、その95%以上はビフィズス菌が占めています。
酸素がある環境では生きていくことができない偏性嫌気性菌であり、口から遠く酸素がほとんど届かない大腸に生息しています。
この大腸でビフィズス菌は、殺菌力の強い酢酸を作り出して腸内環境を保つとともに、ビタミンB群、ビタミンK、葉酸などさまざまな種類のビタミンを合成しています。

骨密度の低下を防ぐビフィズス菌

近年の研究では、ビフィズス菌にはビタミンKを含む多くのビタミンを合成するだけでなく、骨の強度を高める働きがあることが分かっています。

森永乳業が発見したBB536株は、1971年に世界で初めて食品に利用されたビフィズス菌です。従来のビフィズス菌は酸や熱に弱く食品への応用が困難でしたが、BB536株は酸や熱に強いのが特徴です。
そのため胃酸で死滅することなく生きて腸まで届けることができ、殺菌力の強い酢酸を大量の生成して優れた整腸作用が期待できます。
さらに骨粗鬆症モデルラットを使った試験では、ミルクカルシウムまたはミルクカルシウムとBB536株を与えたところ、ミルクカルシウムだけを摂ったラットよりもBB536株を一緒に摂ったラットのほうが、骨の強度が高まることが確認されました。
これはBB536株が持つ整腸作用によって腸内のpHが下がり、カルシウムの吸収が促されたためと考えられています。

腸内のビフィズス菌を活性化して骨を丈夫に

ところが食べ物などから摂ったビフィズス菌は、腸内にもともと生息している常在菌によって数時間から数日程度で便として排出されてしまいます。
もちろん大腸に届いてから便として排出されるまでの期間が短くても、殺菌力の強い酢酸を作り出し腸内環境を整えてくれます。
しかし、ビタミンKを合成するためには腸内で長く活動する必要があります。そこで腸内にもともと生息しているビフィズス菌を活性化させる必要があります。
そのために効果的なのが、ビフィズス菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を大腸に送る方法です。エサを豊富に供給することでビフィズス菌は自ら増殖していき、腸内の発酵を促してくれます。

ヨーグルトを摂ろう

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乳酸菌やビフィズス菌で発酵させたヨーグルトは、牛乳由来の食品のため豊富なカルシウムを含んでいます。ヨーグルト100mlに含まれるカルシウムの量は120mgです。
さらにヨーグルトにはカルシウムの吸収率を高める働きがあります。

・ヨーグルトのカルシウムは吸収率が高い
せっかくカルシウムを摂っても体内で吸収されないと意味がありません。
ところがカルシウムは吸収効率の悪い栄養素の一つであり、野菜は約15%、カルシウムが多く含まれている小魚でも約30%程度です。
吸収率が悪いとその分多くの食品を摂る必要があります。毎日のように小魚をたくさん食べるのはちょっと難しいでしょう。
しかし、ヨーグルトを含む乳製品は豊富なたんぱく質によってカルシウムの吸収が促され、吸収の邪魔をするリンとの結合を防いでくれます。そのため吸収率が40%と他の食品よりも高く、効率よくカルシウムを摂ることができます。

カルシウムを摂るためだけであれば牛乳でも構いませんが、ヨーグルトには発酵の過程で作られた乳酸とカルシウムが結合することで吸収を促す働きがあります。
さらに、含まれるカルシウムの量を見ても100mlあたり100mgの牛乳よりも多い(ヨーグルト100mlあたりカルシウム120mg)ため、より効率よくカルシウムを摂ることができます。もちろんヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌が含まれていますから、優れた整腸作用が期待できます。
腸内環境を整えて発酵を促すことで骨の形成を助けるビタミンKの合成が促されますから、骨密度が気になる方はヨーグルトを積極的に摂りましょう。

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