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一日にどれくらいヨーグルトを食べたら良いのか

ヨーグルトに含まれる乳酸菌の数

ヨーグルトには100mlあたり10億個の乳酸菌が含まれている

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腸内環境を整えることができる乳酸菌は日本人にとってすっかり身近な健康成分になりました。乳酸菌が摂れる食品と言えばヨーグルトです。
近年では健康のためにヨーグルトを摂っている人が増えています。とはいえいくら良い乳酸菌を使っていても、十分な数の菌を腸に送り届けないと効果は期待できません。

では1日にヨーグルトをどれくらい食べたら良いのでしょうか? その疑問を解明するためには、まずヨーグルトに含まれている乳酸菌の数について知る必要があります。

私たちが一般的に口にする市販のヨーグルトは「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)によって、1mlあたり1000万個以上の乳酸菌を含むように決められています。これは100mlなら10億個です。
それ以下の数の菌しか含まないものはヨーグルトとして販売することは出来ません。スーパーやコンビニなどで買うことができるヨーグルトには、少なくともこれ以上の乳酸菌が含まれています。
もちろん商品によってはこれよりも多くの菌が配合されていることもありますが、自然発酵によって作られるヨーグルトには培養できる菌の数に限りがあります。

10億個という乳酸菌の数は決して多くはない

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10億個の乳酸菌と聞くと普通の人はすごく多く感じるでしょう。しかし、私たちの腸内には100兆個もの腸内細菌が生息しています。
100兆の菌が生息している環境にたった10億個の乳酸菌が新たに加わったところで、どれほどの影響があるのでしょうか。
市販されている大きなサイズのヨーグルトは400ml程度の内容量がありますが、1日で食べたとしても摂れる乳酸菌の数は40億個、これでも100兆個の腸内細菌からすると微々たる数です。
いまだにはっきりとした答えは見つかっていませんが、数十億個程度の乳酸菌は私たちの腸にとってはたいした数ではないのです。この程度の数の乳酸菌を摂っても腸内フローラのバランスを変えることはできないと考えられています。

1日にヨーグルトをどれくらい食べれば良いのか

1日100mlでも整腸作用が期待できるという研究結果もある

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一方でヨーグルトを1日に100ml摂ることで、お通じの回数と量の増加といった一定の整腸作用が期待できるという報告もあります。
実際にヨーグルトのパッケージを見ると分かりますが、多くのメーカーでは1日100ml以上を推奨摂取量としています。

明治と昭和女子大学生活科学部が共同で行った研究では、18歳~21歳の女子学生にアンケートを行い、その中から排便回数が週4回以下の便秘気味の方を含む106名を対象に試験を行いました。
試験では106名を1日に100g食べるグループ50名と、250g食べるグループ56名に分けて、LB81乳酸菌を含むヨーグルトを6週間摂ってもらい、食べた量とお通じの関係性を調べました。
その結果、どちらのグループでも食べている期間は「排便回数」と「排便量」が増加し、便秘傾向の方ほど効果が高いことが認められました。
「便の形状」や「すっきり感」にも改善が見られました。また100gと250gどちらのグループでもほとんど差が見られないことも分かりました。

ヨーグルト不老長寿説のメチニコフが勧めるのは300~500ml

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ヨーグルト研究の第一人者であり「ヨーグルト不老長寿説」で知られるロシアの微生物学者イリヤ・メチニコフは、1日に300~500mlのヨーグルトを摂るように勧めています。
もちろんこれはあくまで目安であり、はっきりとした科学的根拠があるわけではありません。メチニコフは経験則から「これくらい食べると健康効果が得られる」ということを言っているに過ぎないのです。
しかし、100年も前に、ヨーグルトを食べることで腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌を抑制できることを指摘していたメチニコフの考えには、一定の説得力があります。

腸内細菌研究第一人者は250~350ml摂っている

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日本で腸内細菌研究の第一人者である東京大学の光岡知足名誉教授は、ヨーグルトを毎朝250~350ml摂る生活を40年ほど続けています。
光岡氏は1960年代にドイツに留学していたときに、現地の人に習って毎朝500mlのヨーグルトを摂ったところお腹の調子が格段に良くなった経験があり、それから1日250~350ml摂る生活を実践しているそうです。
もちろんこの量はあくまで光岡氏が自分に合っていると考える量であり、万人に適しているわけではありません。実感できる効果には個人差があるからです。
光岡氏は「毎日は無理でも、体調を改善したいときなどに一定期間ヨーグルトを多めに摂ると良い」と述べています。

潰瘍性大腸炎を改善するには毎日バケツ1杯分のヨーグルトが必要

1日にヨーグルトをどれくらい食べると良いのかという疑問の答えは、期待する健康効果によっても変わってきます。

潰瘍性大腸炎とは

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潰瘍性大腸炎は国が指定する特定疾患いわゆる難病であり、大腸の粘膜にただれや潰瘍が発生する病気です。症状としては下痢や腹痛、血便などがあります。
いまだにはっきりとした原因が解明されておらず、完治しにくいうえに、症状を再発することの多い病気でもあります。近年では20~30歳の若い人の間で発症する人が増加傾向にあります。

1日2兆個の乳酸菌摂取で症状が改善する

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イタリアのギオンチェティという学者は、潰瘍性大腸炎の患者に1日2兆個の乳酸菌を摂らせたところ症状が改善されたと報告しています。
これはエビデンスがある確かな研究結果で、十分な数の症例が報告されています。1日2兆個という乳酸菌はヨーグルトだとバケツ1杯分になります。この量を食べることは非常に困難でしょう。
もちろん乳酸菌をヨーグルトだけから摂る必要はありません。潰瘍性大腸炎のような特定疾患を抱える方は試してみる価値があります。

明確な答えはない

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1日100mlで効果が期待できるという研究結果は、あくまでお通じの改善に限ったものであり、腸内フローラが改善されたり、免疫力が向上するかどうかは示されていません。
メチニコフが推奨する摂取量、光岡氏が摂っている摂取量は個人の経験と研究に基づいて導き出した量であり、万人に適しているかどうかは分かりません。
潰瘍性大腸炎のような特定疾患の症状を改善するためには、それよりも遥かに大量のヨーグルトを食べる必要があります。
いずれにしてもヨーグルトの摂取量について明確な答えがあるわけではありません。そもそもどれくらいのヨーグルトを摂れば体に良いのか、現在でもはっきりとした研究結果が出ているわけではないのです。

ヨーグルトをたくさん食べないと十分な効果が期待できない理由

動物性乳酸菌は腸内に定着できない

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メチニコフも光岡氏もヨーグルトをたくさん食べることを推奨しています。1日に250mlや300mlという量は普通の方からすれば多く感じられるでしょう。しかし、それには根拠があります。
まず、ヨーグルトに含まれる動物性乳酸菌は生命力が弱く酸に弱いという大きな弱点があります。そのためせっかく生きた菌を摂っても大半は胃酸や胆汁酸で死滅してしまい、生きて腸まで届く菌の数は一部に留まります。
さらに、動物性乳酸菌は他の微生物が居ない環境で育ったために、腸内にもともと生息している常在菌と共存することができません。大半は数時間から数日で便として排出されてしまいます。
ヨーグルトから乳酸菌を摂ったとしても腸内で働くのはほんの短い期間ということになります。十分な効果を期待するなら、常にたくさんの菌を腸に送り届ける必要があります。

免疫力を高めるためにはたくさんの菌が必要

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また、乳酸菌には腸内の免疫細胞を刺激することで免疫力を高める働きがあります。私たちの体内には、ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫システムが備わっています。
そして免疫システムを動かしている免疫細胞の約7割は腸に集中しています。食べ物などから摂った乳酸菌は小腸に送られ、一部はパイエル板と呼ばれる免疫細胞であるリンパ球の集まりによって取り込まれます。
するとパイエル板の下で待機していた樹状細胞という免疫細胞に捕獲されて、その情報が、免疫物質である抗体やサイトカインを作り出すヘルパーT細胞やB細胞に送られます。
このようにして乳酸菌によって免疫細胞が刺激されて、免疫反応が起こることで免疫力が向上する仕組みです。ところが腸に送られる乳酸菌の数が少ないと、パイエル板に取り込まれる菌の数も少数に留まるため、免疫細胞を十分に刺激することができません。
ですから免疫力を高めようとした場合は、少しでも多くの菌を小腸に送る必要があります。

ヨーグルトをたくさん食べることが困難な場合は

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とはいえ、ヨーグルトを毎日のようにたくさん食べる生活を続けることは簡単ではありません。どんなに良い健康習慣でも続かずに三日坊主に終わってしまっては意味がありません。
ヨーグルトが好きでないとたくさん食べる生活は続かないでしょう。光岡氏は「体にいいものであっても、好きだから食べるということでいい。嫌なら摂らなければいい。」と言います。
食べたくないのに無理して食べるとストレスが溜まってしまい、腸内環境に悪影響を及ぼす可能性があります。ヨーグルトだけを食べれば健康になるわけでもありません。

ではどうすれば良いのでしょうか? 乳酸菌を摂ることができるのはヨーグルトだけではありません。
チーズ、ぬか漬けやキムチなどの漬物類、日本の伝統的な調味料である味噌と醤油、甘酒やマッコリなどの酒類などさまざまな発酵食品から摂ることができます。
さらに近年では乳酸菌を配合したサプリメントも普及しています。多いものでは1回分で1兆~2兆個もの乳酸菌を配合していますし、ヨーグルトのように味に飽きることもありませんから、とにかくたくさんの菌を摂りたい方にはお勧めです。

毎日摂ることが大切

ヨーグルトを食べる量も大切ですが、それと同じくらい毎日摂ることが大切です。ヨーグルトに含まれている乳酸菌が腸内に定着できない以上は、毎日のように新たな乳酸菌を腸に送り込む必要があるからです。
ヨーグルトを食べ始めてちょっと体調が良くなったからといって、すぐに摂るのを止めてしまえば、また元の状態に戻ってしまいます。
とにかく継続することが大切なのです。専門家の意見を参考にしながら、自分に適した量を導きだし、そして摂り続けましょう。

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