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乳酸菌で腸の健康を維持

腸は第二の脳

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腸は食べ物に含まれる栄養を分解して吸収し、食べかすを便として排出する器官です。腸の働きはそれだけではありません。
食事や呼吸の際に口や鼻からウイルスや細菌が流入する腸は免疫の最前線です。ウイルスや細菌が引き起こす感染症を予防し、アレルギー疾患のリスクを下げるために腸の働きは欠かせません。
さらにビタミンや脂肪酸などを合成して体の機能を保っています。このように腸は体の機能を維持するうえで極めて重要な役目を担っていることから、「第二の脳」と呼ばれています。
実は脳が持つ中枢神経系と腸が持つ腸神経系は自律神経によって繋がりお互いに影響しあっているのです。ですから腸内環境が悪化すると脳の働きにも影響を与えてしまいます。
脳は全身に指令を送る体の中枢です。つまり腸の健康状態が悪化すると全身の健康状態が悪化してしまいます。

腸の健康は腸内細菌で決まる

腸内に生息する100兆個以上の細菌

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私たちの腸内には500種類以上、100兆~1000兆個もの細菌が生息しています。これらの腸内細菌は種類ごとにまとまっていて、その形がお花畑のように見えることから腸内フローラと呼ばれています。
腸内細菌は体に有用な働きをする善玉菌、体に害を及ぼす悪玉菌、そのどちらにも属さない日和見菌に分かれています。腸内では善玉菌と悪玉菌が絶えず勢力争いを繰り広げています。
日和見菌は善玉菌と悪玉菌のどちらか優勢なほうに味方をする性質があります。ですから腸内で善玉菌の数が上回っていれば、日和見菌が味方をして腸の健康にプラスに働きます。
逆に悪玉菌が増殖して善玉菌の数を上回ると、これまで無害であった日和見菌までが悪玉化してしまいます。それによって腸内環境が悪化し、腸内腐敗が進行して便秘や下痢、お腹の張りや腹痛といったさまざまな不調が引き起こされます。

現代人の腸内環境は悪化している

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近年は女性や高齢者を中心に便秘などお腹の不調を抱える人が増えています。これは現代人の腸内環境が悪化していることを示しています。その要因としては、食生活の変化、ストレス、過労、不規則な生活などが挙げられています。

食物繊維不足と肉類の摂取過多が腸内環境を悪化させる

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その中でも深刻なのが食生活の乱れと栄養バランスの偏りです。食物繊維は腸内で善玉菌のエサとなるため、腸内環境を整えるために欠かせない栄養素です。
逆に肉類に含まれる動物性たんぱく質や脂質は、悪玉菌のエサとなり増殖を引き起こします。肉類を摂り過ぎると悪玉菌が食べ物を腐敗させて腸内腐敗を進めてしまいます。
ところが日本では昭和の中頃からいわゆる食事の欧米化が急速に進んだことで、食物繊維の摂取量が減少の一途を辿っています。逆に肉類の摂取量は右肩上がりに増えているのです。

強いストレスは腸に悪影響を及ぼす

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ストレスも腸内環境を悪化させる大きな要因です。日々多忙な生活を送っている現代人は、仕事や人間関係などで常に強いストレスに晒されています。
腸と脳は自律神経を通して繋がっていますが、脳が強いストレスを感じると腸にも悪影響を及ぼします。強いストレスを日常的に感じている人は、腸内に生息するビフィズス菌などの善玉菌が減少し、ウェルシュ菌などの悪玉菌が増殖するという報告もあります。

善玉菌の95%以上を占めるビフィズス菌

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人間の腸内に生息する主な善玉菌は乳酸菌とビフィズス菌です。実は乳酸菌は腸内では少数派です。腸内に生息する善玉菌の95%以上を占めているのはビフィズス菌です。
なおビフィズス菌は正確には乳酸菌の一部ですが、違う善玉菌として区別されることがあります。ビフィズス菌は酸素がある環境では生育できない偏性嫌気性菌で、口から遠く酸素が薄い大腸に生息しています。
ビフィズス菌は大腸で食物繊維などの糖類をエサにして活動し、殺菌力の強い酢酸を生成します。この酢酸は悪玉菌を抑制し、食べ物を動かしながら排出するぜん動運動を促してくれます。
さらにビフィズス菌はビタミンB群やビタミンK、葉酸などのビタミンの合成、病原性大腸菌O157などの感染予防、免疫力の向上にも関与しています。腸の健康を保つためにはビフィズス菌を活性化する必要があります。

善玉菌2割を維持して腸の健康を保つ

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腸の健康を保つために意識したいのが腸内フローラのバランスです。健康の人の腸内では腸内細菌全体の約2割を善玉菌が占めています。残りは悪玉菌1割、日和見菌が7割です。
日本で腸内細菌研究の第一人者である東京大学の光岡知足名誉教授は、これを「2:1:7の法則」と呼び、腸内フローラのバランスが重要であることを訴えています。
腸の健康を保つために腸内細菌全てを変える必要はありません。腸内の善玉菌を増やすことで腸内環境を良好に保つことができます。
だからといって悪玉菌を全てなくせば健康になれるわけではないのです。悪玉菌は食べ物の消化吸収やビタミンの合成など一定の役割を担っています。
大事なのはバランスです。全体の2割を善玉菌を占めていれば、悪玉菌が抑制され、日和見菌が悪玉化することもなく腸の健康を保つことができます。

乳酸菌が腸の健康を保つ

そこで摂りたいのが乳酸菌です。ヨーグルトなどの発酵食品を作る菌として知られている乳酸菌には優れた整腸作用が認められています。

生きた乳酸菌が腸内で直接増えるわけではない

とはいえヨーグルトなどから生きた乳酸菌を摂ったとしても、腸内で直接増えることは普通はありません。
光岡氏は「生きた菌が腸まで届いて、そこで増殖するということは普通はない」「それは実験でも検証している」と言います。
これまで行われたさまざまな研究によって、食べ物から摂った生きた菌が腸内で増殖する可能性が低いことが分かっているのです。
これは乳酸菌が腸内にもともと生息している常在菌に勝つことができないからで、その多くは数時間から数日程度で便として排出されてしまいます。それも時間が経つと便から検出されなくなります。つまり腸内に定着できないのです。

生きた乳酸菌は腸内で有機酸を生成する

では生きた乳酸菌を摂る意味が全くないのかというとそうではありません。乳酸菌は糖を分解して乳酸や酢酸などの有機酸を生成する性質があります。
それによって腸内のpHが下がり腸内環境が酸性に近づきます。これはヨーグルトや漬物などの食品が作られる過程で起こる発酵と全く同じです。
善玉菌は弱酸性の環境を好み、悪玉菌はアルカリ性の環境を好みます。腸内で発酵が進むと善玉菌の活動に適した環境に変わり、もともと生息している善玉菌を活性化して増殖を促すことができます。

乳酸菌が免疫細胞を刺激する

乳酸菌の働きは整腸作用だけではありません。それ以上に重要な働きが免疫賦活作用です。私たちの体にはウイルスや細菌から守る免疫システムが備わっています。
免疫システムを動かす免疫細胞の約7割は腸に集中しています。これを「腸管免疫」と呼びます。乳酸菌が腸に届くと菌体成分が腸内の免疫細胞を刺激します。
それによって乳酸菌の情報がやりとりされて、免疫反応が起こり抗体やサイトカインといったウイルスやアレルギー症状に対処する免疫成分の生成が促されます。
このように乳酸菌によって繰り返し免疫反応が起こることで、免疫細胞が鍛えられて免疫力が向上すると考えられています。

その結果として、体全体の働きが正常に保たれ、機能性を高める効果が期待できます。腸内フローラの改善もその恩恵と捉えることができます。

生きた菌でも死滅した菌でも構わない

生きた菌でも死滅した菌でも腸内の善玉菌が増える

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巷では「生きた乳酸菌を摂ろう」「生きた乳酸菌を腸に届ける必要がある」という話をよく耳にします。「死んだ菌では意味がない」という趣旨のことを宣伝しているヨーグルトメーカーもあります。
もちろん生きた乳酸菌が健康に良いのは間違ってはいません。しかし、だからといって死滅した乳酸菌に効果がないわけではありません。

「ヨーグルト不老長寿説」で知られるロシアの微生物学者イリヤ・メチニコフは、マウスを生きた乳酸菌を含むエサ、または加熱殺菌した乳酸菌を含むエサを与えるグループに分けて効果を比較する実験を行っています。
メチニコフはこの実験結果について、「どちらのマウスも同じように生育したが、加熱殺菌した乳酸菌を与えたマウスのほうが良い効果が得られた」と述べています。100年も昔に、死滅した乳酸菌にも効果があることを報告しているのです。
また近年の研究では死滅した乳酸菌が腸に届くことで他の善玉菌のエサとなり、一定の整腸作用が期待できることが分かっています。
つまり乳酸菌は生きていても死滅していても、菌体成分が腸に届くことで腸内にもともと生息していて善玉菌の増殖を促すことができるのです。

死滅した菌で腸内フローラが改善する

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死滅した乳酸菌にも腸内フローラを改善する効果があることを示す実験結果もあります。マウス90匹を以下の三つのグループに分けて腸内フローラの変化を比較しました。

1:通常のエサ
2:牛乳を添加したエサ
3:殺菌酸乳(乳酸菌を7日以上生育してから殺菌した牛乳)

その結果、3のマウスの腸内フローラではビフィズス菌の数が非常に多く、1と2の約10倍に及ぶことが確認されました。

免疫力の向上には死滅した菌のほうが適している

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死滅している菌のほうが有利な場合もあります。乳酸菌が小腸に届くとその一部はリンパ球の集まりであるパイエル板に取り込まれます。
パイエル板は免疫細胞の司令部のような役割を担っていて、ここで体外から侵入した異物の情報を解析し、その情報を交換することで免疫反応を起しています。
パイエル板を通過した乳酸菌はその下で待機していた樹状細胞にキャッチされます。すると乳酸菌の情報がヘルパーT細胞やB細胞に送られることで抗体やサイトカインの生成が促されます。

ところが生きた乳酸菌は菌同士が凝集する性質があるため、その塊が大きくなるとパイエル板を通過できません。パイエル板の穴はとても小さいのです。
乳酸菌は死滅すると菌体同士が凝集することがなくなるため、パイエル板を通過しやすいという利点があります。

摂取する乳酸菌の数が重要

出来るだけ多くの菌を摂ろう

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腸の健康を維持するためには菌の生き死によりも摂取する菌の数が重要です。乳酸菌は生きた状態で腸に届いたとしても、自ら増殖することも腸内に定着することもできないからです。
ですから耐えず新しい菌を送りこむ必要があります。それも出来るだけ多く摂りたいところです。乳酸菌は特に副作用がなく、摂り過ぎるということはありません。
腸管免疫を刺激して腸の健康を保つためにはより多くの菌が必要です。なぜなら乳酸菌を摂っても全ての菌がパイエル板を通過できるわけではないからです。
摂取する菌の数が多いほどパイエル板を通過できる菌の数も多くなり、免疫細胞を刺激する力も強いものになります。

30億個程度の菌では足りない

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となると気になるのが腸の健康を維持するために必要な菌の数です。それについてはっきりとした答えが見つかっているわけではありません。

例えばヨーグルトには1mlあたり1000万個の乳酸菌が含まれています。「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)という法律でそう決められているからです。
これは300mlでは30億個です。ですが光岡氏は30億個程度では足りないと言います。30億個と聞くと膨大な数と思われるかもしれませんが、腸内に100兆個以上の細菌が生息していることを考えるとたいした数ではないのです。
この程度の数の菌が新たに加わったところで腸内フローラのバランスを変えることはできないでしょう。そもそも腸内に定着すること自体ができませんが。
市場で販売されているヨーグルトの中には100mlに満たないものもあります。この程度の量を摂っても、腸管を十分に刺激することはできないのです。

ヨーグルトなら250~350g摂りたい

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では乳酸菌をヨーグルトで摂る場合にどれくらいの量が必要なのでしょうか? 明確なエビデンス(科学的根拠)が示されているわけではありませんが、メチニコフは目安として1日300~500g摂ることを推奨しています。
一方の光岡氏は毎日250~350g摂っているそうです。これはドイツに留学していたときに、現地の人に習って毎日500gのヨーグルトを摂ったところ、体調が良くなったという経験から導き出された量です。
とはいえこの二人が推奨する量はあくまで自身の研究と経験に基づいた目安に過ぎません。ヨーグルト以外の食品も活用しながら、自分に合った摂取量を導き出してはいかがでしょうか。

サプリメントなら大量の菌が摂れる

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大量の乳酸菌を摂る場合に活用したいのがサプリメントです。多くのメーカーでは製造段階で加熱殺菌処理した死滅した乳酸菌を採用しています。
乳酸菌は死滅させることで高密度に圧縮できるため、小さなカプセルや錠剤に大量の菌を配合することができます。サプリメントに含まれる乳酸菌の数は1回分で1~2兆個程度です。
これだけ膨大な数の菌を摂れば腸管免疫を刺激する効果も強いものになり、十分な効果が期待できます。ヨーグルトと違って味に飽きることもなく、続けやすいのも魅力です。

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